2011年10月5日水曜日

Inside Macintosh

 スティーブ・ジョブズが亡くなったというニュースを聞いて、自分の中で忘れかけていたものがよみがえってきた。

 憧れていたMacintoshでプログラムを書くことになって、買ってもらったMacintoshの解説本「Inside Macintosh」まだ、Macintosh IIciの頃。高いから1台しか買ってもらえなくて、同僚と取り合いしながらプログラムを書いていたっけ。SE/30でThink Cを使うのは画面が狭くて大変だった。そのうち、会社の大半のメンバーはゲームを作っているような会社だったから、NECのPC-9801がパソコンの主役で、GLIBを駆使していかに高速なグラフィックを扱うプログラムを書くか、そんなことに夢中だった頃だから、Macintoshのユーザーインターフェイスの解説は衝撃だった。ダイアログのボタンの配置は「OK」が右下、その左隣に「キャンセル」。ユーザはダイアログに表示されるメッセージを読まないかもしれない、そのとき一番選択肢として適切なものを「OK」となるようにメッセージは意図し、右下に配置しなさい。ユーザは反射的に「OK」を押すかもしれない。でも、プログラムは出来るだけその問い合わせを拒否できるように設計し、「OK」の左隣に「キャンセル」を配置しなさい。というふうに書いてあったと記憶している。ボタンを配置する位置のピクセル数まで決まってた。アイコンについては、アプリケーションのアイコンとそのアプリケーションが出力したデータファイル(書類)のアイコンは一見しただけに判断できるように同じデザインにしなければならない。例えば、アプリケーションにAという文字を使ったデザインにしたならば、データファイルは書類にAという文字を入れたデザインにすべきだとか。Macintoshがディスプレイがなぜモノクロなのかとも解説されていた。世の中には色盲の人もいるのだから、色で判別しなければならないアプリケーションを設計してはならないと。
 その思想にいっぺんに魅了された。日本語の訳本は手あかで黒くなって臭うようになるまで読んだし、最新のInside MacintoshやAppleから入手できるDeveloper向けの書類を読むために英語を勉強した。SymantecやMetroworksからリリースされる最新の開発ツールを使いこなすためにオブジェクト指向も勉強した。
 そして、Macintoshのユーザーインターフェイスガイドラインは未だに僕の中でインターフェイス設計の基礎として生きている。

 僕が、ジョブズに影響を受け、その後を付いていこうとして、今の開発者としての自分がいる。いつの間にか今の職場のなかで自分の居場所をみつけるために他人の様子を窺うようになってしまっていたけれど、決して楽ではなかった道を選んできたのは、あなたと同じように革新的なものを作りたいという情熱があったからです。そうでした、忘れていました。自分は自分。他人に合わせる必要なんてないんでしたよね。

 ジョブズ、あなたは私の先生であり、私の進むべき道を示してくれました。
今日までありがとう。

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